事業所外観

1．事業所の概要、障害者雇用の背景と経緯

（1）事業所の概要

株式会社アスピカは、昭和44（1969）年創業、福井県と岐阜県を営業エリアとし、冠婚葬祭に係るサービスを提供している会社である。

組織体制として、アスピカ事業部、平安閣事業部、はくれん事業部、流通事業部、及び調理部を有し、また、その他、介護福祉事業の運営を手掛けている。本事例で紹介する「アスピカ流通事業部」は、冠婚葬祭事業を行うための引き出物や記念品などの多くの商品を一括管理し、ジャスト・イン・タイムで納品する業務を担っている。

（2）障害者雇用の背景と経緯

昨今の葬儀件数の増加やアスピカグループのシェア率のアップ等による受注増に伴い、アスピカグループ内施工施設が増設となり、それに伴い流通事業部においても商品包装及び配送業務量が増加し、人員を増やす必要があった。

アスピカグループの事業は、全体として顧客と接する機会が多い業務内容である中、流通事業部の業務内容は障害者雇用における多様な雇用形態での対応が比較的とりやすい状況であったため、平成27（2015）年に障害のある従業員の追加求人募集について障害者就労支援事業所に相談したところ、障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）の支援についての情報を得ることができた。

その後、支援センターの紹介をきっかけに、平成28（2016）年、29（2017）年で計5人の障害のある従業員の採用につながっている。

2．精神障害者雇用の取組内容と効果

（1）Aさんについて（精神障害：統合失調症）

Aさんは当初、他の従業員と共に冠婚葬祭用商品の箱詰め作業を行う現場に配置されたが、業務量が集中する場合などに他の従業員の動きが体調に影響することがあった。そのため、一人で作業ができる商品を選定し、かつ従業員が比較的少ない現場に配置換えを行った。

Aさんは現在、冠婚葬祭の引き出物に使われる“県特産品詰合せ”の箱詰め作業を担当しており、仕入れられた商品在庫棚から対象品をピックアップ、箱の組立て、商品詰込み、ふた閉め、シール貼りの作業を行っている。

また、作業内容の理解促進のため、見てわかる作業マニュアルが必要と判断し、作業の流れ、作り方について、わかり易い手順書を作成した。また、この作業マニュアルは他の障害のある従業員及び障害のない従業員にも活用できるものとなった。

（2）Bさんについて（精神障害：気分変調症）

Bさんには、就労体験時に支援センターとの相談の上、パソコンを使っての入力作業を主に担当してもらうこととした。

作業内容は、会葬礼状における住所、氏名の印刷用データの入力、印刷済み礼状の二つ折り、箱入れ及び結婚式の席次表データ入力である。

現在は、担当する業務の範囲が広がり、礼状、席次表の印刷等ができるまでになっている。

引き出物の箱詰め作業を行うAさん

PC入力作業を行うBさん

（3）流通事業部共通の取組と効果

アスピカ流通事業部として受注増加傾向に伴う人員補充が必要となった近年、障害者雇用の促進と職場定着を意識した採用に注力している。

障害のある従業員の採用に際しては、全員就労体験を行い、個々の障害特性を管理担当者及び他の従業員と共に把握した後に採用につなげている。また、業務内容の選定、作業環境、コミュニケーション方法、対象者本人の体調面等に対する対応については、必要に応じて支援センターの支援、協力を得る体制としている。

「過去、障害のある従業員に対して、どのように仕事を任せたらよいのかわからない点があり、戸惑うこともあったが、支援センターの支援を受ける体制をとり、一緒に働くことで、障害のない従業員と変わりがないことに気づいた。今では障害のある従業員の採用に抵抗がなくなった。」と管理担当者は述べている。

一方、勤務年数の長い障害のある従業員が、新規採用の障害のある従業員に対し作業内容を教えることもあり、“指導”も障害のない従業員と同様、業務項目に入れるようになった。

3．今後の展望と課題

アスピカグループの事業が現在も拡大する中、平成29（2017）年度にも流通事業拠点を一拠点増設中であり、それに伴い障害のある従業員を含めた従業員の採用準備を進めている。新拠点においても現在の障害者雇用体制を維持、展開するとともに、事業所内に職場支援員の役割を担うスタッフの充実を図るため、今後も、「障害者職業生活相談員資格認定講習」の受講等、スタッフの教育も進めていく予定である。

また、平成29（2017）年夏季には、特別支援学校生徒の職場見学、体験学習の依頼があり、受入れを実施した。今後も体験学習の受入れを行う予定である。

同事業所は、特別支援学校や支援センター、ハローワークをはじめとする各機関との連携を密にし、引き続き障害者雇用の促進に努めていく意向である。

執筆者：独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構　福井支部
高齢・障害者業務課　　藤野　伸二