事業所外観

1．事業所の概要

生活協同組合連合会東海コープ事業連合（以下「当事業連合」という。）は、平成6(1994)年4月に設立され、東海3県（ぎふ、あいち、みえ）の生活協同組合の共同購入・店舗の商品企画・調達・品質管理、生活サービス事業、物流のサポートを通じて、東海3県約90万人の組合員のくらしに貢献する事業を行っている。

障害者雇用推進への取組みは、「未来につながるあんしん生活」の理念のもと、組織として障害者の方とともに働くことへ寄り添う姿勢を持ち続けていることであり、そのような組織風土を大切にすることを働く全職員がめざしている。

2．障害者雇用の経緯

（1）重点課題として

社会における多様性が求められる中、当事業連合では平成24(2012)年度の経営方針で障害者雇用を重点課題として位置づけた事業展開を進めることとし、ハローワークや特別支援学校、就労支援機関等と連携しながら、法定雇用率を継続して達成できる組織をめざし、取組みを始めた。

また、平成25年度、30年度の障害者の法定雇用率の引き上げ（それまでの1.8％から、25年度2.0％、30年度2.2％）もあり、引き続き重点課題として積極的に取り組んでいる。

障害者雇用の推進にあたっては、下記2点を重点としている。

• トライアル雇用を積極的に進めること。
• 知的障害者の就労体験の受け入れを進めること。

（2）トライアル雇用について

ハローワークと連携して、その職業紹介により、原則3か月の有期雇用契約（トライアル雇用）を締結し、実施している。トライアル雇用後は常用雇用への登用をめざしており、そのためにトライアル雇用期間中のフォローを特に重視している。

（3）知的障害者の就労体験の受け入れについて

当事業連合の物流センターにおいて、地域の特別支援学校との連携に基づいた生徒の就労体験を積極的に受け入れ、卒業後の採用と継続雇用をめざしている。

また、取り組み始めた当時に、現場の担当者からの要望を受け、「障害者雇用の手引き書」を独自に作成・配付し、対応基準・方法などを明確にして採用を進めてきた。採用・配置にあたっては、就労体験などにより把握した適性を大切に、各人の強みを生かせるような担当業務、配置にするようにしている。併せて、採用される側、採用する側、受け入れる側の3者が安心して長く働けるように、業務・環境・指導方法などについて改善に努めている。

紙媒体書類の電子データ化・管理作業

3．取組内容と効果

（1）状況把握と面接の実施

配属（担当業務・職場の決定）や雇用継続にあたって重視するのは、本人の状況や特性を「経過」の中で把握し、見極めることである。そのために重視しているのは、普段からの状況把握と、年一回の本人と担当職員との面接である。状況を踏まえた面接により本人の不安や仕事に対する姿勢を把握することができ、適切な対応をとることが可能になる。また、仕事・職場に対する不適応等の問題・課題が見受けられる場合は、家族や関係機関との連携をとることも重要になる。必要な場合には親御さんなどにも面接に同席いただき、現状の問題点を共有し、どうすれば改善できるのか一緒に考えるようにしている。そして、問題の内容によっては、内容に応じた支援機関等と連携し、支援機関の担当者により本人の仕事ぶりを定期的に把握してもらうなどにより、本人と仕事のマッチングの再点検をおこなうなど、さらに適した仕事・職場を見出すようにしている。

そして、面接等の内容は、記録として保管するとともに、配属先の管理者や人事部門が共有することで、その後の担当業務の見直しや労働契約の検討などに活かしている。

（2）交流会の実施

障害のある職員がやりがい・働き甲斐をもって長期的に働ける環境を整備することは雇用者側として当然のことである。一方で、長く働き続けるためには、本人の努力に加えて職場の仲間、家族の働きかけ、サポートの役割は大きい。そのため、同じ建物内にあるコープあいちと連携し、年1回、コープあいちの障害のある職員との交流会に参加している。この交流会は、双方の役員をはじめ、障害のある職員やその家族、連携している特別支援学校の先生、支援機関の担当者、本人とともに働いている上司や同僚が参加する催しである。

参加する障害のある職員からは、それぞれの職場においてどんな業務を行っているのかについて管理者とともに報告し、実際の苦労や今後の意欲を共有する場となっている。

その後、専務理事より、各人の取組に対し、感謝状を授与し、それぞれの努力が「見える活動」となるようにしている。さらに、次年度に特別支援学校を卒業し、入社する予定である者への「内定証書」についても交流会の場で授与し、繋がりを作る場ともしている。

報告のあと、参加者がともに昼食をとりながら、日常業務について情報交換し、お互いに認め合いながら働き続けられる職場づくりの契機となっている。

そして、このような交流会を行うことで、障害者雇用を組織全体の取組として捉え、現場任せにすることなく、関わる職員一人一人が障害者雇用に対する意識改革と、知識を深めることで、お互いに支え合う職場風土づくりをめざしている。

（3）無期雇用契約への転換実施

改正労働関係法令の適用に先立って、平成29(2017)年度より、雇用の安定をめざして、障害のある職員も含め、要件を満たす職員については有期雇用契約から無期雇用契約への転換を実施することとした。この転換実施により、縁あって入協した方が安心して働き続けられる職場を提供していくことができ、また、安心して働き続けられる職場を提供していくことは事業体としてもマンパワーを高めることに繋がるものと認識している。

4．今後の課題

（1）働き続けるための制度構築

障害の有無に限らず、人は働き続けることで、担当職務の習熟度合が増していく。仕事の範囲を広げたり、新たな仕事に挑戦することは、本人の働く意欲や経験の蓄積にもつながる。また、できることが増えることにより本人の自信となり、組織にとってもプラスの効果が生み出されてくる。このため一人ひとりの働き甲斐を大切にしていきたいと当事業連合では考えている。

今後は、仕事に対する評価の仕組みや賃金への反映、能力を維持向上させるための教育研修体系づくりを課題と考えている。

（2）障害者雇用に対する理解向上

当事業連合では障害者雇用は、特定の部署だけで取り組むことではないと考えている。継続した障害者雇用には、本人と一緒に働く周りの職員の理解も必要である。そのために障害者雇用に関する基本的内容の学習や、職員の意識を高めるために障害者職業生活相談員資格認定講習参加の推奨などにも取り組んでいる。家族、社外の支援機関・支援団体、そして職員が障害者に向き合いこれまで以上に寄り添い、働き続けられる職場環境づくりを模索している。

執筆者：生活協同組合連合会東海コープ事業連合
管理本部人事総務部　部長　川端宏一