事業所外観

1．事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

株式会社鳥取銀行（以下「当社」という。）は、昭和24（1949）年、「鳥取県に地元の普通銀行を」との地域の熱い期待を担って創立されて以来、鳥取県内に本店を置く唯一の地方銀行として、県内外に66店舗を有し、預金業務、貸出業務、為替業務、投資信託や保険の窓口販売などを行っている。

急速な少子高齢化や、人口減少などの環境変化に的確に対応し、顧客との関係や地域との連携を強化することで、「お客様の明るい未来と、活力あふれる地域を創造する銀行」を目指す姿としている。

（2）障害者雇用の経緯

障害者雇用の経緯については、障害者雇用が義務化された、昭和51（1976）年の身体障害者雇用促進法の改正後に進められたようである。

また、企業としての社会的責任（CSR）の観点からも積極的に雇用するようになった。

しかし、近年、当時雇用した行員が退職時期を迎え、実雇用率が低下した。

そのため、平成25（2013）年4月、鳥取障害者職業センター（以下「職業センター」という。）に対応策を相談していたころ、同年9月行政当局から、法定雇用率未達成のため、早急に達成するよう指導があった。

2．障害者雇用体制の構築と具体的取組

（1）障害者雇用体制の構築

ア.

情報収集・人脈作り

平成25（2013）4月時点では、聴覚障害と肢体不自由のある行員しか採用していなかった。

前述の障害種別以外の障害のある行員を採用できないか考えたが、人脈等がなかったため職業センターに直接訪問し相談した。

職業センターから、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）の紹介を受け、それぞれと対応策を協議するなかで、当行の業務が、コツコツとまじめに業務を行うとされる知的障害のある人の障害特性に向いていることがわかった。

その間も、各支援機関の研修、セミナー、ワークショップに積極的に参加したり、知的障害のある社員を雇用している地元企業を見学するなど、障害者雇用に関する情報収集を行って、取組に対して理解を深めた。

イ.

行内調整・職務の選定

障害者雇用に関する理解を深める一方、配置部署の選定を行内で検討し、顧客と直接応対しない、バックオフィス的な役割を担っている、業務サポート部の業務の中に、知的障害のある人が携ることができるものがあるという結果に至った。

業務サポート部とは、主に全店の書類の取りまとめ・発送、ATM管理、集金などの業務を行っている部署である。

ウ.

受入れ態勢作り

知的障害のある行員の採用は初めてだったので、受入れ態勢の整備の一つとして、配属予定の業務サポート部全員を対象に、職業センターの障害者職業カウンセラーを講師として「障害特性や関わり方のポイント」などについての研修を行った。

そして、支援機関から、知的障害のある人は環境の変化に弱い障害特性が見受けられることがある、と聞いたので、健康面等に配慮するため採用時から当行健康保険組合の保健師も関わった。

同時に、当行のコンプライアンスに関する冊子（標題：「鳥取銀行のきまり」）を、わかりやすい表現にするとともにふりがなを振ったものを作成した。

入行時には、その冊子を使ってコンプライアンスを徹底するとともに、定期的に勉強会を行うなど意識の向上に努めた。

また、業務について、どのようなことをどのような水準で、どのくらいの数量ができるのか全くわからなかったため、最初に用意した業務は、チラシ封入、粗品用カレンダー巻き、書類のPDFであった。

そして勤務場所として、業務サポート部の1室を準備した。

（2）具体的取組

ア.

採用

毎年10月に実施される、障害者就職合同面接会に参加し、平成25（2013）年12月に4名を中途採用した。

近年は、特別支援学校（以下「支援学校」という。）卒業生も積極的に採用している。

雇用形態はパートタイマーで、労働時間は6時間勤務としている。

イ.

実習・職場見学の受入れ

現在、支援学校からの実習や職場見学を積極的に受け入れている。

求職者は実際の業務を経験、見学することで働く姿がイメージできるとともに、当行も一人ひとりに合う業務を考えて、切り出しすることができており、受入れは双方のメリットが大きい。

ウ.

現在の状況

知的障害のある行員のまじめで正確・丁寧な仕事ぶりが職場で評価され、現在は業務サポート部の各部署と、人事部で、下記の業務を担い業務内容が広がっている。

簡易郵便物受取	名刺印刷、封筒印刷・作成
メールシーラー作成	ゴム印作成
小切手・手形帳作成	用度品（伝票、帳票など）管理・準備
口座振替依頼書印鑑照合	ATMコーナー清掃補助
伝票製冊	シュレッダー業務

3．まとめと今後の展望

当初、法定雇用率達成のため、知的障害のある行員を雇用しようと考えたが、何から始めたら良いのか分からず、手探り状態で取り組んだ。

そして、準備を進める中で「少しの配慮をするだけで、障害のない行員となんら変わらない」ことに気づいた。

銀行は、「信用・信頼」で成り立つ業種のため、採用時は障害のない行員と同様に、挨拶、身だしなみ、コンプライアンスの遵守などについて指導している。

現在、業務サポート部では「彼らがいないと業務がまわらない」「爽やかな挨拶で職場が明るくなった」という声をあちらこちらで聞く。

このような評価を受けているのは、知的障害のある行員がそれぞれの職場で、がんばって業務を行っていること、そして、業務サポート部の上司や指導役の先輩、同僚たちが、彼らに対して優しい気持ちで接するとともに、社内業務・ルール及び社会人としてのマナーを教えながら強い信頼関係を築いたからだ。

また、情報収集の段階から親身になって相談に乗ってくれた、職業センター、ハローワーク、支援センターの力添えも大きい。

各支援機関には今でも協力を得ている。

最後に、知的障害の人はまじめで潜在能力が高く、少しの配慮で活躍できる人が多い。

今後も、鳥取銀行でイキイキと働きがいを持って、定年まで活躍できるよう支援したい。

執筆者：鳥取銀行　障害者雇用担当　　長戸　奈緒子