支援機関との連携による精神障害者・発達障害者雇用への取組
- 事業所名
- 帝人コードレ株式会社(法人番号 4280001003920)
- 所在地
- 島根県大田市
- 事業内容
- 人工皮革 研究・開発・製造・販売
- 従業員数
- 170人
- うち障害者数
- 4人
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 1 研究開発業務 内部障害 1 検査業務 知的障害 精神障害 1 研究開発業務 発達障害 1 検査業務 高次脳機能障害 難病 その他の障害 - 本事例の対象となる障害
- 精神障害、発達障害
- 目次
-
事業所全景
1.事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
帝人コードレ株式会社(以下「当社」という。)は昭和46(1971)年に設立し、大阪市に営業、島根県大田市、広島県三原市に工場を設置している。
事業内容は、人工皮革・合成皮革の研究開発、製造、販売を行っている。生産は大田工場と三原工場で行っており、この生産された物を大阪の営業で販売している。
当社で生産している商品は、国内外有名スポーツ選手が着用するシューズや使用するボール、また、多くの方が愛用したランドセル等の素材となる人工皮革を生産している。
当社の製品は全世界で使用されており、グローバルに事業を拡大し、また、地域環境、資源、エネルギー問題に対応した技術開発を推進しながら、物作りを進めて行く事を掲げている。
(2)障害者雇用の経緯
当社は平成27(2015)年3月までは、従業員160人で身体障害のある従業員が2人在籍しており、障害者雇用率については、特段問題視していなかった。しかし、同年4月より障害者雇用率の引き上げがあり、現状のままでは障害者雇用率を満たさない状況となるため、平成26(2014)年末より、ハローワークおよび関係機関の勧めで、障害者面接会等に参加、積極的に障害者雇用に向け活動を行っていった。その結果、平成27(2015)年4月に1人の精神障害のある従業員を採用するに至った。
入社後の支援に関しては、ハローワークや地域障害者職業センター(以下「職業センター」という。)、障害者就業・生活支援センター(以下「支援センター」という。)等の支援機関と連携しながら行っている。
また、その2年後、以前より採用している近隣の高校より紹介を受け、発達障害のある従業員1人、身体障害のある従業員1人を新たに採用することとなった。この2人の従業員についても、学校を始め各支援機関と連携し職場定着が図られている。
以下では、精神障害のあるAさんと、発達障害のあるBさんの2人の採用・職場定着の事例を紹介する。
2.取組の内容、効果
(1)募集・採用
Aさんは、ハローワークの障害者面接会、職場見学、体験実習(以下「実習」という。)を経て採用した。
面接では精神障害があるとの印象はほとんど感じられず、普通に仕事はできるのではないかと判断し、採用の方向で進めたが、当社としても初めての精神障害のある社員の採用であり、職場見学や実習を行った後に、トライアル雇用の制度を利用しその後採用した。
また、Bさんは、高校在学中に実習を2回(各2週間)実施、仕事や職場の雰囲気に慣れてもらい、卒業後正規社員として勤務している。
(2)障害のある従業員の従事業務と配置
Aさんは、職場見学、実習、トライアル雇用を経て本採用となり、品質検査グループに所属していた。勤務は朝8時30分から17時の7時間45分、週5日の勤務をしていたが、精神的な課題や、周囲の環境、人員配置等の課題が生じたことから、配置転換について、職業センター、支援センターの担当者を交えて検討し、入社2年目に入るときに製品の研究開発部門へ配置転換を行った。
Bさんは、製品検査グループで、製品検査を行っている。BさんもAさんと同様に朝8時30分から17時の7時間45分、週5日の勤務をしている。
Aさんは有期の雇用契約を結んでいるが、基本的に継続更新の形態をとっている。また、Bさんは、新卒採用ということで、正社員として雇用としている。
品質管理グループ
研究開発グループ
製品検査グループ
(3)具体的な業務内容
Aさん、Bさんともに、それぞれの状態に応じた職場で業務を担当している。
- ア.
- Aさんについて
■品質検査(耐久試験)入社2年目まで
品質検査では、日々生産される製品の一部をサンプルとして、試験機により引っ張ったり、曲げたりする耐久試験を行った。はじめは単純な作業を行っていたが、様子を見ながらレベルアップし、複雑な試験ができるようになってきた。製品によって試験方法が違うため、間違った試験をしないようにすることが重要であり、徐々に慣れ戦力となってきたが、机上での仕事が多く精神的な面や、周囲の従業員への気遣いなどの課題が表面化してきたため、支援センターの担当者と検討した結果、研究開発部門へ転属してもらった。
■研究開発 入社2年後
研究開発部門では、興味のある仕事のようで、精神的な面も周りのフォローがあり特に課題もなく行っている。
この仕事は、新商品を一から自分で考案し、小試作、中試作、大試作、場市(市場に出回ること)と段階を踏む仕事で、素材の知識や生産機械の特性を理解して行う、非常に難しい仕事である。Aさんは、このようなことについて、かなりの興味があり、日々先輩従業員と共に新商品開発を行っている。
- イ.
- Bさんについて
■製品検査
日々生産される製品を、目視でキズや汚れ、色を確認する作業であるが、付随作業として、製品カット、幅や厚みの測定をおこない、その結果をパソコンに入力する作業も行っている。
Bさんは、一人で没頭する仕事が良いとのことであったため、この部署が最適と判断し配属した。通常製品検査は抜き取り検査で行うが、当社の場合は全量検査を行っている。
キズや汚れに気づかず出荷してしまうことは、会社としても致命的であり、集中力の必要な作業であるが、Bさんはこの点に優れており、あるとき、検査している製品の中でキズがあったにも関わらず、先輩従業員が見落としたところを指摘するなど、検査業務は問題ないと判断している。また、最近では、他の従業員が残業するときなど、自分ら進んで残業を行うようになってきている。
Aさんの作業の様子
Bさんの製品検査の様子
(4)指導上の配慮・支援機関との連携
Aさんについて、入社から2年目までは、品質検査の職場は女性が多いということで、なかなか馴染めず、ストレスもかなりためていたようであった。研究開発部門の職場へ変わってからは、男性が多くなり気遣いはしているものの、以前の様なストレスはなくなった。このようなストレスがたまったときは、支援センターの担当者と話をしたり、会社の担当者と話をするなど、業務時間内であっても、臨機応変に対応できるよう配慮している。
Bさんについては、ことばで表現することが難しい場合があることや、話が伝わりにくい場面が見受けられることから、この点について、他の従業員にも周知し、指導する際には、「絵や写真を使う」、「ゆっくりと説明する」などの配慮を行っている。両名とも、定期的に支援センターの担当者との面談を行うなど、当社だけでは対応できない点について、支援を受けている。
また、各職場とも、障害のある従業員を受け入れることは、初めてのことで、戸惑いも数多くあったが、総務担当者とのコミュニケーションを密にし、課題(困難)を乗り越えてきている。この経験から障害のある従業員への対応だけでなく、周りの従業員に対しても配慮が必要と痛感している。
(5)障害のある従業員が入社したことによる効果
2人の障害のある従業員が入社したことにより、周りの従業員にも少しずつ変化が見受けられようになった。
仕事での指導の面では、分かりやすい説明や標準書を整理するなど、今まで省略していたことを、改善するようになった。また、日常でも、仕事中の声かけや休憩時間など気遣った会話などを行っている。また、両名の真面目な仕事ぶりをみて、見習わなければならない点を改めて実感しており、周りの従業員たちに良い影響を与えていると思われる。
3.今後の課題
Aさん、Bさん共に、今後も継続して働き続けてもらいたいと考えている。障害の有無にかかわらず自立して人生を送らなければならない。そのためには、社会の厳しさも伝えていかなければならないと考えている。これからいろいろな場面で困難にも遭遇するが、それを経験し乗り越え、充実した人生を送れるよう支援していきたい。
そのためには、個々の障害特性等を理解できている担当者が必要で、この担当者を育成することも、今後の課題と考えている。障害者雇用に関して、これからも直面すると思われる課題について、当社だけの力で解決するには限界があり、そのためには障害のある従業員本人は元より、家族や職業センター、支援センター等の支援機関、また周りの同僚の協力は欠かせないと考えている。しかしながら、支援機関からの支援をいつまでも期待するのではなく、自助努力を最大限発揮できるよう日々取り組んでいこうと考えている。「障害」という垣根を取り払い、もっと多くの障害のある従業員の力を借りたいと思っている。
執筆者:帝人コードレ株式会社 総務管理課
総務班 班長 波多野 詠治
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