最高のチームを作り、プロフェッショナルを目指す!
- 事業所名
- ミウラジョブパートナー株式会社(法人番号 1500001020425)
(三浦工業株式会社の特例子会社) - 所在地
- 愛媛県松山市
- 事業内容
- 本社地区施設の清掃、点検、メンテナンス及び環境保全に関する業務
- 従業員数
- 18人
- うち障害者数
- 14人
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 1 清掃業務 肢体不自由 1 事務処理、検品業務 内部障害 知的障害 7 清掃業務、洗濯業務、検品業務、製本業務、集配業務 精神障害 2 清掃業務、洗濯業務 発達障害 3 清掃業務、洗濯業務、製本業務 高次脳機能障害 難病 その他の障害 - 本事例の対象となる障害
- 聴覚・言語障害、肢体不自由、知的障害、精神障害、発達障害
- 目次
-
事業所外観(本社)
1.特例子会社の設立
産業用ボイラのトップメーカーである三浦工業株式会社(以下「本社」という。)を中心としたミウラグループは、「世界のお客様に省エネルギーと環境保全でお役に立つ」という経営理念の実現に向けて、「熱・水・環境の分野で、環境にやさしい社会、きれいで快適な生活の創造に貢献します。」というスローガンのもと、ボイラ製品、水処理機器、食品機器、メディカル機器、環境機器等、様々な製品の販売とメンテナンスをグローバルに展開している。
同グループでは、「働きがいのある、働きやすい職場づくり」をモットーに、従業員の人格・個性を尊重し、安全な職場環境と良質な労働条件を提供するとともに、人材の育成と活用を推進している。障害者雇用にも積極的に取り組み、職場のバリアフリー化や聴覚障害のある社員への対応等、障害のある社員が働きやすい環境を整えてきた。
本社社屋・ショールーム棟新設に伴う清掃業務の拡大を契機として、障害のある社員にとって、その能力が最大限発揮できる働きがいのある、働きやすい職場作りと障害者の雇用機会の拡大を目的に、本社総務部内に設置していた清掃部門を切り離し、平成29(2017)年2月20日付けでミウラジョブパートナー株式会社(以下「MJP」という。)を設立、同年5月に特例子会社として認定された。
三浦工業株式会社の概要 所在地 愛媛県松山市 設 立 昭和34(1959)年5月 ミウラグループ 国内13社(本社含む)、海外15社
※平成29(2017)年9月30日現在事業内容 小型貫流ボイラ・舶用ボイラ・排ガスボイラ・水処理装置・食品機器・滅菌器・薬品等の製造販売、メンテナンス、環境計量証明業 等 2.基本方針の理解と達成
MJPでは、『私たちは、ミウラグループ社員の皆様の職場が「働きやすく、そして、きれいな職場」として、維持できるように清掃と保全の業務で貢献します。』をミッションとして掲げ、このミッションを理解し達成するための大切にすべき5か条を定めた。
(1)「コミュニケーションのとれた良い会社をつくろう。」
いつも元気よく、自分から進んで挨拶し、積極的に“報告・連絡・相談”を実行、一緒に働く社員に対する思いやりとして、手話やパソコンを習得、タブレットパソコンを導入しチャットワークを開始する等、新たなコミュニケーションにもチャレンジしている。
(2)「業務に必用なスキルを身につけ、自分自身、そして、チームの成長をめざそう。」
成果を出すために、チーム全員で工夫し、作業品質の向上と工数削減に取り組んでいる。各人が成長(スキルアップ)するために、通信教育や書籍、インターネット、先輩のアドバイスを活用して勉強に励み、通信教育ビジネスマナー講座で優秀賞を受賞するなど、すばらしい結果にもつながっている。アビリンピック出場を目指しチャレンジを続けている。
(3)「労働災害ゼロ活動を推進しよう。」
自分自身の安全を守るため、作業前のKYT(危険予知訓練)を必ず実施、顧客であるミウラグループ社員の労働災害を発生させないように細心の注意を払って業務に取り組んでいる。
(4)「環境経営を意識して実践しよう。」
環境負荷低減のためのテーマを決め、環境に配慮した業務を心がけている。CSR(企業の社会的責任)推進活動の一環として、地域の美化に貢献している。
(5)「健康経営を推進しよう。」
社会人また、ミウラグループの社員として、「健康」を維持して業務に取り組む、食事・睡眠・運動・休息をバランスよくとって、日常生活及び業務に支障のない「健康づくり」をするよう心がけている。
MJPが中心となり行っている
地域貢献活動風景3.最高のチーム作りへの取組
(1)モチベーション教育
基本方針を実現するためには、「いつもどのような考えを持っていなければならないのか」ということを社員全員で検討し、特に大切にすべき考え方を社員自らでまとめ、掲示している。
いつも見える場所に掲示
毎月の社員全員の会議の中で、社長が講師となり、例えば、「プロフェッショナルを目指すため何をすべきか」、「コミュニケーションのとれた最高のチームとは何か」等をテーマとして活発に話し合っている。
話し合いで出た意見を掲示
(2)業務・実績考課表(目標カード)の活用
半年ごとに目標を設定し、達成に向けて業務・実績考課表(目標カード)を活用している。自己評価と上司評価で賞与が決定する、自分の給料は自分で稼ぐということを理解し目標達成のためにチェレンジしている。
達成状況については、毎月の会議で各自が報告することとしている。
目標カード
(3)行動計画の共有
最高のチーム作りや生産性向上のためには、日々の行動計画が最も重要である。全社員向けにタブレットパソコン等を整備し、全員の役割や行動が確認できるようにしている。
行動計画表
(4)実習生の受け入れ
採用に当たり、応募書類や1回の面接だけで判断するのは難しい。
特別支援学校の生徒や応募者の職場実習を相思相愛の原則で働けるよう積極的に受け入れている。実習期間は1~2週間であるが、受け入れをすることで社員の成長にもつながっている。
生徒は、卒業後の社会参加と自立に向けて、働く習慣や意義、職場でのルールや他人とのかかわり方を学ぶことができ、応募者は、自分自身のスキルや適応力等を見極めることができ、意味のある研修となっている。
また、できないことや身体の限界等、仕事において不利になるような障害特性も理解した上で、ミウラグループ全体から仕事の切り出しを行い、門戸を広くしたいと考えている。
4.プロフェッショナルを目指す社員達
MJPは、設立時より建屋内清掃、工場内の保全業務、製造現場で使用された軍手の洗濯等を行っている。その他、製造工場の加工部品の検品、作業日報等の製本、販売部門のダイレクトメールやパンフレットの袋詰め、設計部門の図面の電子データ化等新たな業務にも取り組み始めている。
(1)清掃業務
本社ビルの食堂、廊下及び階段等の清掃活動を行っている。清掃業務の知識や手順をわかりやすくまとめた清掃マニュアルを作成し、従事する障害のある社員がいつでも確認できるよう工夫している。使用する清掃用具や洗剤については、清掃場所や汚れ具合によって使い分け、隅々まで丁寧に清掃している。作業ごとに開始と終了をタブレットパソコンに入力し、目標時間をクリアできるよう業務に取り組み、クリアできない場合はその原因や改善点をチームで話し合い、より一層良い仕事ができるように日々努めている。
- ア.
- Aさんの話
本社総務部クリーンサービス課に採用、MJP設立と同時に転籍。現在は主に食堂の清掃を行っている。食堂は本社社員の打ち合わせの場所としても頻繁に利用されるため、打ち合わせをしている場合は、できるだけ離れて別の場所を清掃するといった細かな配慮をしている。アビリンピックに出場し入賞するのが今後の目標である。
- イ.
- Bさんの話
MJPに入社して間もないが毎日楽しく仕事をしている。清掃業務と運搬(検品した樹脂成形品を少し離れた工場まで車で運ぶ)を担当している。
一番楽しい仕事は食堂の清掃である。階段は人が行き来する場所なので迷惑をかけないよう周りを見ながら清掃するよう心がけている。運搬時の運転は、交通安全に十分気をつけている。
身体を動かすことが好きで社会人ソフトボールチームに所属している。
清掃業務の様子(1)
清掃業務の様子(2)
(2)洗濯業務
主にケミソフト素材の軍手の洗濯を朝昼の2回行う。洗剤の量や受入数の数え間違いのないように注意し、「報・連・相」をしっかり行いながら業務を進めている。
- ア.
- Cさんの話
本社総務部クリーンサービス課設立時メンバーであり、MJP設立と同時に転籍。洗濯業務と階段・廊下・会議室の清掃を担当している。後輩を指導する際は、ゆっくりと分かりやすく説明することを心がけている。洗濯業務と清掃業務どちらの業務も楽しみながら従事している。
小説や図鑑を読むことが好きで、今は日本の歴史に興味を持っている。歴史の図鑑を読んでいるとおもしろく、いろいろなところに旅行したいと思う。
がんばって働いて会社を大きくしたいという目標を持っている。
- イ.
- Dさんの話
MJPに入社して1年であるが、洗濯業務を担当しながら人手の足りない部署に助っ人として忙しく働いている。
洗濯業務では、より汚れが落ちるよう使用洗剤の改善も提案。洗剤と水等の配分を自分なりに研究し、パワーポイントで発表した。もっと改善できるのではないかと研究中である。
人手が足りない時に頼りにされることがとてもうれしいので、様々な仕事を覚えて成長し、いろいろなことに挑戦していきたいと考えている。
洗浄業務の様子
(3)樹脂成形品の検品
機械内部に使われる樹脂成形品の目視検品作業、ヒビや歪みなど製品に問題ないか検査する。グループ会社において今まで外注していた検品業務を受注し、月3,000個の実績を上げている。納期を厳守し、“お客様に喜んでもらおう”という精神で、ミスをしないよう、常に集中力・注意力を持って業務を行っている。
- ア.
- Eさんの話
本社電機技術部に所属していて、MJPに転籍した。今までより仕事量は多いが、一緒に働く仲間ができ良好な人間関係を築くことにより楽しく仕事をしている。
検品する樹脂成形品は毎回違う物である。指定された検品箇所をしっかりと理解し作業する。検品依頼書は1度目を通せば理解できる。検品の仕事は根気と集中力が必要なため楽しいとは言えないが、やりがいがある。皆と協力しながら仕事を進めるのは楽しい。休みの日はゆっくり過ごし1週間の疲れをリセットして仕事に臨んでいる。
樹脂成形品の検品業務の様子
(4)設計図面データ化(スキャンニング)
本社では、文書保管コストの削減、保管場所の省スペース化、情報の共有化等のためにペーパーレス化を進めている。MJPは、10,000枚の設計図面のデータ化を受注し、スキャンニング作業を行っている。
- ア.
- Fさんの話
設計図面データ化業務と樹脂成形品検品業務を担当しながら、社内のサブリーダーとして作業効率と会社の利益等を考えながら業務に携わっている。現場では、障害のある社員一人ひとりの個性としっかり向き合い、障害特性を理解し、それに基づいたコミュニケーションをとるよう心がけている。自分自身も成長しながら、共通の目標に向かってがんばっていけるチームづくりをしていきたいと考えている。
設計図面データ化業務の様子
納期を厳守するためにホワイトボードを活用
5.今後の展望と課題
MJPは、障害のある社員一人ひとりが、個性を活かし、働きがいを感じ、成長を続けることができるよう、以下のような展望と課題対応により、様々な業務内容の拡充を進めている。
(1)今後の展望
- 社員教育のため、社外の様々な研修制度を活用する。通信教育全員受講。
- チャットワークの活用でコミュニケーションの拡大と更なる改善を進める。
(おもしろいことを楽しく) - 企業間の情報交換(人材・職種・教育等)を増やす。
- 地域の企業・教育機関・行政も交え、障害者間の交流の場を広げる。
(2)現状の課題と対策
- ア.
- 指導者の育成
指導者やサポートをする側に、育成に必要な知識が不足している。指導する側にも“プロフェッショナル育成に向けた教育”が必要である。現在、指導者は障害のない社員が行っている。今後は、障害のある社員が指導者となることを目指している。
- イ.
- 個性の把握
一人ひとりの個性が把握できていなく活き活きと働ける環境にあるかが不明である。所属する部門に任すのではなく、全体を把握し、サポートする部門の強化が重要となる。定期的な面接により、適材適所に“JOBローテーション”をしていく予定である。
- ウ.
- 障害のある社員の職域の拡大
「稼ぐ力」が不足している。更なる業務拡大による雇用機会創出を実現し、生産性と付加価値を追求していく必要がある。
- エ.
- 教育訓練
個人の職業適性等に見合った教育の計画が未整備である。個人ごとに教育訓練計画を作成し、成長できる環境整備を検討中である。
MJP代表取締役社長の福島広司氏(本社取締役兼常務執行役員、管理本部長兼任)は、「障害のある社員は皆個性が違うが、個人個人を理解・把握し、指導をすればその能力を発揮する。それぞれの個性を活かして成長する手助けをし、様々なことにチャレンジし、いきいきと仕事ができるようサポートしていきたい。本社の清掃業務やミウラグループが外注していた仕事を取り込んでいけるよう更に業務拡大し、雇用機会創出を実現したい。」と語る。
障害のある社員がより一層活躍できるよう、MJPの積極的なチャレンジに今後も期待したい。
MJPの社員の皆さん
執筆者:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
愛媛支部 高齢・障害者業務課 松本真美子
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