障害種別を越えた雇用管理の工夫
- 事業所名
- 株式会社びわこビジネスサービス((株)関西アーバン銀行の特例子会社)
(法人番号 3160001001672) - 所在地
- 滋賀県大津市
- 事業内容
- 銀行頒布加工業務、印刷業務、銀行業務受託、清掃業務
- 従業員数
- 47名
- うち障害者数
- 16名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 5 印刷業務、清掃業務、銀行業務受託 肢体不自由 2 銀行頒布加工業務 内部障害 知的障害 1 銀行業務受託 精神障害 8 銀行受託業務、印刷業務、発送業務、銀行頒布品加工業務、
清掃業務発達障害 高次脳機能障害 難病 その他の障害 - 本事例の対象となる障害
- 聴覚・言語障害、肢体不自由、知的障害、精神障害
- 目次
-

同社膳所営業所外観
1.事業所の概要、障害者雇用の経緯
株式会社びわこビジネスサービス(以下「同社」という。)は、昭和52(1977)年に滋賀相互銀行(後のびわこ銀行)の子会社として設立。平成22(2010)年にびわこ銀行が(株)関西アーバン銀行(以下「同行」という。)と合併したことにより、現在は同行の子会社となっている。設立当初から親会社の印刷業務などを受託していたが、平成27(2015)年5月に特例子会社としての認定を受けた。
平成26(2014)年以前の親会社での障害者実雇用率は法定雇用率をわずかに下回る状態であり、この状態を解消することが特例子会社設立の出発点であった。もともと親会社の印刷業務などを請け負っていたが、障害者の雇用をきっかけに業務用頒布品の加工(顧客へ配布するティッシュペーパーなどへのシール貼付作業)や清掃業務も受託することにより、障害者の安定的な雇用に資することができた。
現在、本社では印刷業務、発送業務、同社膳所営業所にて膳所寮(営業所に隣接する職員寮)の定期清掃と京都藤森寮の清掃(月一回訪問)、頒布品の加工業務を行い、同社心斎橋分室では、発送業務、PCデータ入力業務、銀行業務の事務補助作業などを行っている。
2.障害のある職員の従事する主な業務
(1)印刷業務
同行グループ企業全職員(約三千人)の名刺印刷、業務用封筒などの印刷、顧客法人への各種挨拶状の作成、送付を担当している。名刺印刷は人事異動が集中する4月に多忙を極める。封筒などについてはデザインも含めて対応しており、グループ以外の企業からの受注もしている。

印刷物の封入作業
(2)頒布品加工業務
同行顧客に配布する頒布品(ティッシュペーパー、食器洗い用スポンジ、アルミホイルなど)に社名が入ったシールを貼付する作業であるが、配布する時期が重なることがあり、その際は業務が集中する。

ティッシュペーパーへのシール貼付作業

スポンジへのシール貼付作業
(3)清掃業務
同膳所営業所に隣接する職員寮の共有部分(通路、浴場、トイレ等)の清掃や植栽の剪定管理も行う。さらに月1回程度、京都の職員寮も巡回し、清掃を行なっている。
なお、清掃業務の担当職員が、平成29(2017)年のアビリンピック滋賀2017(第16回滋賀県障害者技能競技大会)のビルクリーニング種目に出場し、県1位となった。

職員寮の清掃作業
3.取組み内容
(1)職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ)の配置
在籍する障害のある職員の障害種類は、精神障害、身体障害(肢体不自由、聴覚障害)、知的障害と多岐に渡っている。また、就業するにあたっての課題がそうした障害種類以外である場合などもあり、職員全体の日常のコミュニケーションとともに、障害に応じたケアが重要であると同社では考えている。
そのため、同社に入社した障害のない職員のなかで、聴覚障害者と職場をともにすることにより手話や障害者支援に興味・関心を有する職員については、高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」という。)が主催する企業在籍型職場適応援助者養成研修を平成29(2017)年に受講し、企業在籍型ジョブコーチとして、障害のある職員とのコミュニケーションやケアに取り組んでいる。
その結果、日々の細かな変化に気付くことができ、タイムリーな相談等の対応をとることが可能となり、過度にストレスが溜まることなどがないようになっている。具体的には、特に精神障害に多く見られると思われるが、自身の業務に集中するあまりそれがストレスになっていることに気付かずに体調を崩してしまうことについて、ジョブコーチや管理者が適宜確認し、適切にコーチングすることにより、できるだけ通常の状態(安定して就業できる状態)を維持することができている。
(2)作業指示方法の改善
毎日の作業指示については、従前、朝礼などの場で確認をしていたが、精神障害のある職員の中で、前日までの仕事内容を忘れてしまい、その日の自分の作業(清掃)について毎回初めから確認しないと作業を開始できない状況が発生した。具体的には、清掃を実施する箇所が分からず、毎回管理者に確認をしていたため、スムーズな作業が行えず、時間や手間が掛かり、効率が悪かった。
これを解消するため、職員が毎日作成する日報について、その日に清掃する箇所を管理者が事前に蛍光マーカーで印し、清掃後に本人がチェックを入れるよう様式を改善した。その結果、作業担当する箇所が明らかとなり、スムーズな作業の開始、他の清掃業務担当者(2名)との円滑なコミュニケーションにつながった。
併せて、日報を単なる作業報告だけでなく、その日の本人の体調や気分を記載させ、それに対して管理者が感想やアドバイスを書いて本人に伝えることにより、双方向の意思疎通ができ、本人のモチベーションの向上や不調の早期発見につなげることができた。
(3)コミュニケーションと体調管理への配慮
障害のある職員の障害種別は精神障害、身体障害(肢体不自由、聴覚障害)、知的障害と多岐に渡っており、職員毎に配慮すべき事項は異なるため、大きな課題になるのは職員間あるいは管理者とのコミュニケーションをいかに図るかにあると考えた。
そのため、毎日の朝礼や定期的なミーティングだけでなく、日々の日報やジョブコーチとの情報交換によって障害のある職員の体調管理に努めた。具体的には、管理者が日々の作業を確認し、変調が見られた職員に対してはタイミングをみて面談を行い、場合によっては社長が直接面談し、体調や仕事ぶり、本人の感じ方・考えなどの把握と、相談・助言などを行っている。重要なのは、本人が気付いていない課題・リスクがありうることであり、この面談を通して本人への気付きを促すようにしている。
また、職員間の関係作り、雰囲気作りも重要と考えており、終日清掃業務に携わる日であっても必ず事務所に朝、昼、退社時に顔を出すよう指示している。清掃業務の調整担当者の1名が非常に明るい性格で話題も豊富であり、世間話などで盛り上がり、職員間の関係作りにつながり、自然と事務所内の雰囲気も風通しの良い環境となっている。
これとは別に、親会社のある銀行本店内の同社心斎橋分室に勤務する職員との交流会を半年に1回程度行い、繁忙期においては互いの事務所へ訪問し協力するなど行っている。特に繁忙期出張協力については、業務上の必要があるための作業ではあるが、普段と異なる事務所での作業ということで良い刺激になっており、また、本人のスキルアップへのモチベーションともなっていることが窺える。
(4)就労支援機関などの活用
上述のとおり、職員の健康・業務管理については様々な工夫をしているつもりだが、想定していないような課題が発生することもあり、毎回試行錯誤を繰り返している状況でもある。この際に重要になっているのが支援機関の存在である。地域障害者職業センターに配置されているジョブコーチやカウンセラーによる支援やアドバイス、障害者就業・生活支援センターからの仕事や生活面からのアドバイスが非常に有効となっている。
また全国重度障害者雇用事業所協会が主催する事業所勉強会にもオブザーバー参加しており、業種を超えて様々な問題についての知見が得られ、個別問題解決の参考としている。また、業種間の交流ができることは、障害者雇用という課題に対しての共通認識が得られ、自社だけで解決しなければならないのではという孤立感の解消にもつながっていると考えている。
(5)アビリンピックの活用
先に述べたように同社の清掃業務担当職員が平成29(2017)年度のアビリンピック滋賀2017(機構滋賀支部主催)に参加し、ビルクリーニング種目では県代表の座を獲得することができた。これにより平成30(2018)年度に沖縄県で開催される全国大会に出場することが決定し、本人のモチベーション向上だけでなく、職員全体の意識向上、一体感の醸成につながることを期待している。
4.今後の課題、展望
同社では障害者雇用については今後も更に拡大させていくつもりである。そのためにまず必要なのは、職域の拡大であると考えている。現在の業務に満足せず、障害のある職員のスキルアップを図り、障害者がグループ会社全体にとってなくてはならない存在となっていくことが、大切であると感じている。
次に同社では障害者を雇用するにあたっては障害種別にある程度の配慮方策はあり、マニュアル化もされているかと思うが、実際に個々の雇用管理に携わったとき、それだけでは十分ではないと感じることが多いと感じている。問題が起こったときに様々な試行錯誤を繰り返して、その都度対応してきているのが実情であり、今後も様々な問題が起こるかもしれないが、取組方針は変わることはない。試行錯誤も場当たり的ではなく、様々な支援機関からのアドバイスなども活用することが重要となる。
また職務とのマッチングも重要である。同社は障害種別を限定して採用しているわけではなく、求職中の障害者が希望している職務内容と同社の仕事がマッチしているか、同社にて配慮することで希望する仕事にできるか、ということを採用の大きなポイントしている。そうした採用の結果として様々な障害種別の職員で構成されることとなったが、今後はこの多様性を生かした業務展開を図っていくことができればと考えているところである。
一つひとつのアイディアはあまり大々的な取組ではないかもしれないが、ちょっとした工夫でも働く障害者の目の輝きが変わる瞬間があると感じている。モチベーションの向上、風通しのよい職場の醸成→職員のスキルアップ→会社としてのパフォーマンスの向上という好循環に繋げていくことが理想である。
執筆者:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
滋賀支部高齢・障害者業務課
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