聴覚障害者の電子部品製造業における合理的配慮事例
- 事業所名
- 合理的配慮事例・30218
- 業種
- 電子部品製造業
- 従業員数
- 54人
- 職種・従事作業
- 電子精密用金属部品の生産作業(銅ベース板の穴開け加工、プレス加工)
なお、本稿では2名の聴覚障害のある方について記述する(Aさん・63歳、Bさん・65歳)。 - 障害種別
- 聴覚障害
- 障害の内容・特性
- 両者とも重度の聴覚障害のある方で、コミュニケーションの手段は手話もしくは筆談が主。ただし、Bさんは口話(口唇の動きを読み取り理解する)も可能。
それぞれの性格特徴等は、Aさんは明るく表情豊かで、身に付けた技術に自信と誇りを持っており、精力的に仕事に取り組むが、一方で感情の揺れが大きく、うまくコミュニケーションがとれなかったり、納得いかないことがあると、言動に出ることがある。Bさんは常に穏やかで思慮深く、あまり感情を表に出さないが、人の表情から気持ちを読み取ることに長けている。職人気質で仕事に誇りを持ち、正確にコツコツと行う作業を得意としている。 - Aさん: 本人の希望で面談を継続しており、現在は1対1ではなく、担当者が不在の際にAさんに業務指示・連絡を行っている従業員2名を加え、全4名で行っている。仕事上の報告や相談にとどまらず、「何か困っていませんか」、「休みはどうされるのですか」、「何かおもしろいことはありましたか」等々、話題は多岐にわたっており、自由に意見交換できるコミュニケーションの場となっている。
- Bさん: 本人の希望により、現在は定期的な面談は行っておらず、何かあった時など必要に応じて面談を実施している。Bさんは障害をもつ従業員のまとめ役的な存在なので、これまでの面談では、自分のことだけでなく、Aさんや後輩従業員に代わって希望や想いを会社に伝えることも少なくない。Aさん・Bさんは互いに補完し合う関係で、Bさん自身のことで自ら言いにくい場合は、Aさんが代わりに会社に伝えるという。
障害者への配慮の提供にあたり、障害者と話し合いを行った時期・頻度等の配慮提供の手続きの詳細
現在Aさんは勤続13年、Bさん17年と両者ともベテラン社員といわれる域に達し、聴覚障害をもった新入社員に仕事を教える立場になっている。入社以来、長年続けてきた週末の面談は、以下のように様変わりしている。
最後に、社長から「当社は60歳の定年後も働く意欲を持った人は再雇用しているので、長く働いてくれている社員が非常に多い。障害をもつ社員で30年選手もいるんですよ。先日、担当者から『Bさんが“少し体がきつくなってきた”ということで作業量を見直した』との報告を受けた。Aさん・Bさんは共に確かな技術をもった我が社の大切な宝。これからも長く勤めて欲しいので、各々と相談しながら年齢や体力に応じた働きやすい環境づくりに努めていきたい」と語ってくれた。
取材を通して、社長や担当者が話してくださった想いの中に年長者や技術者に対する敬意が感じられた。「“障害者だから”ではなく、人として全従業員に誠実に接する」という社風が、障害を持つ方々の励みになっており、当事業所の従業員の定着率の高さにつながっていると思われる。
配慮を受けている障害者の意見・感想等
Aさん:以前の会社で身に付けた技術を、この会社でも活かすことができた。仕事に誇りを持ってやっている。この会社の良さは家庭的な雰囲気だと思う。製造部長(担当者)には何でも話しやすい。そういう環境をつくってくれて感謝している。Bさんとは公私にわたり親しくしている。僕のことをよく見ていてくれて相談にのってくれる。頼りになる存在である。これからも共に長く働いていきたい。
Bさん:この会社でプレスの仕事を通していろいろな経験ができた。会社から求められて働いていられることに喜びを感じている。Aさんとは同じ障害を持つ者同士、互いに助け合い、励まし合ってやってきた。そういう仲間に恵まれたことは良かった。年齢とともにだんだん体がきつくなってきたが、仕事は私の生きがいなので、これからも体調を維持しながら生涯現役でがんばりたい。

Aさんの作業風景

Bさんの作業風景
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