• 精神障害者保健福祉手帳2級（統合失調症）を所持している。症状として幻聴、偏頭痛等がある。物静かで穏やかな性格。

• 精神障害者保健福祉手帳2級（統合失調症）を所持している。特段の症状はなく比較的安定している。物静かで穏やかな性格である。趣味は将棋で、このことが他の社員とのコミュニケーションに役立つことになった。

募集・採用時の合理的配慮

面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること

1. Nさんは、平成27（2014）年3月にハローワークより紹介を受けて面接を行った。 面接時には障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）の支援員と地域障害者職業センター（以下「職業センター」という。）のジョブコーチに同席してもらい、対象者の緊張をほぐすよう努めた。支援員、ジョブコーチには面接担当者のことばを分かりやすいことばに置き換え、対象者が理解しやすいよう伝えてもらうようにした。
2. Tさんは、平成28（2015）年7月に職業センターより紹介を受けた。職業センターのジョブコーチ同席で面接を実施し採用となった。
3. 両名ともに2か月間の職場実習（障害者就労インターンシップ事業）を行い、採用に至った。現在も引き続き定期的にジョブコーチ支援を受けており、対象者への声かけを仲立ちしてもらうことにより対象者は安心して業務に取り組むことができている。

その他の配慮

1. 同事業所では、通常2階の事務所で面接を行うが、そこでは他の従業員が仕事をしているため、周りの人の声や物音により対象者が緊張することで、気持ちや体調に変化をきたし、萎縮したり、偏頭痛を起こし、平常心での面接ができない恐れがあることから、3階の静かな会議室で面接を実施した。静かな環境で面接したことにより、対象者はリラックスした気持ちで面接に臨むことができた。
2. Nさんに続き、Tさんを雇用するに至ったのは、一人では休憩時に話し相手がいないことや、仕事の繁忙時に交代ができるなどのメリットがあることによる。二人は気遣いや争いごともなくスムーズに仕事に取り組むことができている。

採用後の合理的配慮

業務指導や相談に関し、担当者を定めること

1. 対象者（Nさん）は、雇用直後から仕事の結果報告や業務に対する質問などをすべて総務部門（以下「総務」という。）に話したり、聞きに来ることが多くあった。そこで業務中の職場での様子を見ていると、各部署の複数の担当者から業務指示を受けて混乱に陥ることがあるということが分かった。それ以後、業務指示は、各担当者からの直接の指示ではなく、窓口を総務に統一した。具体的には、総務が各担当者から相談を受け、業務内容を整理し、その後、対象者に総務から指示を伝える体制に変更した。その結果、対象者は混乱に陥ることなく、落ち着いて仕事に取り組むことができるようになった。
2. 仕事をスム－ズに行うために段階を踏んでひとつずつクリアし、前に進めるように総務が対象者と各担当者の橋渡し役を担うようにしている。職場責任者と、総務全員（現在3名）で対象者の体調や状況を把握共有しながら相談しやすい体制づくりに気を配っている。

出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること

1. 業務指導上の配慮から、対象者2名の勤務時間は総務の忙しい月曜・木曜日は午後のシフト勤務とし、13時から17時の4時間勤務。火曜・水曜・金曜日は9時から14時の4時間勤務にしている。
2. 対象者(Nさん）は、毎日出勤はしているが、事業所に着いてから体調の不調を訴えることが時々あり、そのときには体調の様子を見て総務の判断で帰宅させている。病院への通院時は、支援センターの支援員が同行をするようにしている。

できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること

対象者は二人とも物静かで穏やかな性格であり、周りの社員との会話や休憩時間の共有を積極的にできないことから、仕事以外の休憩時間まで職場の同僚と一緒にいることで精神面や体調面に不調をきたさないよう、3階会議室を対象者専用の休憩室としている。
二人の仲も良好であることから殆どの休憩時間を休憩室で過ごしている。

本人の状況を見ながら業務量等を調整すること

1. 障害特性から体調を崩したり、最近は少なくなっているが出勤にも波があることから、集中力の持続等、気持ちの状況変化がないか気配りし、常に対象者の状況を見守るようにしている。また、総務の所属とし常に業務量を調整している。
2. 業務は一つの作業に偏らず、パンフレットへの押印や仕分け作業、発送作業、利用者の送迎用の車輌の洗車等、仕事に変化を与え、仕事に飽きが来ないように配慮している。
3. 一つひとつの作業が終わった時点で次の業務を与えるのではなく、次の業務に対し気持ちの整理ができて新たな気持ちで仕事に臨めるよう業務の間に10分間の休憩を設けている。

Tさんの作業の様子

Nさんの作業の様子

本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること

障害のある社員を雇用するにあたり、社内で事前の説明をした。老人介護が中心業務であるが、利用者の中には障害のある人もいることから、障害のある社員を雇用することについて、社内で構えたり否定するというようなことは全くなかった。
他の社員（スタッフ）も対象者をよく理解し、日頃から周りの社員（スタッフ）間の協力体制や連携を密にし、対象者に声かけをしたり、和やかな雰囲気で温かく見守っている。

その他の配慮

1. 日頃から対象者への声かけは欠かさないようにし、会社はあなたを必要としているということを感じてもらえるようにしている。
2. どうすれば効率的にできるか、作業に不備があれば勤務時間内、対象者の作業能力の範囲でやり直せる内容ならやり直す、やり終わった仕事を依頼元に渡すまでが仕事だという指導を粘り強く継続して行っている。
3. 障害のある社員の雇用では、担当者がよく理解し、対象者に向き合い寄り添う気持ちが必要だと考えている。その取り組む姿勢は他の社員にも良い影響を及ぼすと考えている。
4. 対象者本人は現状に満足しつつあるが、会社としては対象者自身がもっと頑張って認めてもらい、もっとお金を稼ごうと思ってほしいと考えている。そのための全面的なサポートに、引き続き注力していく所存である。