肢体不自由者の事務職における合理的配慮事例
- 事業所名
- 合理的配慮事例・30253
- 業種
- 情報通信業
- 従業員数
- 318人
- 職種・従事作業
- 事務職
- 障害種別
- 肢体不自由
- 障害の内容・特性
就労上の課題 - 上肢・下肢障害等
- その他
- 障害者職業生活相談員 特例子会社
募集・採用時の合理的配慮
面接の際にできるだけ移動が少なくて済むようにすること
本事業所(以下「同社」という。)は特例子会社であり、複数の支店を有する。対象者の勤務する支店には、70名の障害のある社員が在籍しており、車いす利用者は6名。社屋の廊下やトイレは広く、扉は引き戸であるなどの配慮がされている。したがって、対象者の面接の際に支障はなかった。駐車スペースもあり、面接時のマイカーによる訪問も可能であった。


その他の配慮
同社では、ハローワークで紹介された応募者とハローワークで1次面接を行い、その後、各支店でデータ入力等の職場体験を行うこととしている。職場体験を通じ、本人のパソコンスキルを把握するとともに、応募者自身が職場環境に適応していけそうかについて体験する機会としている。その後、社長も入って2次面接を行い合否を決める。パソコン操作上必要な場合は、肘を固定できるもの(アームレスト)等の使用を認めている。
また、面接時には応募者に対して必要な配慮事項を直接確認して、応募者の不安をなくようにしている。対象者も必要な事項についての確認がなされ、具体的配慮がなされた。
採用後の合理的配慮
業務指導や相談に関し、担当者を定めること
親会社からの受注拡大に伴い、順次採用を行っている。指導の担当者については、新人の配属先のリーダーであり、通常は障害のある社員であることが多い。障害者職業生活相談員である担当課長は新人社員との相談を随時行うこととしている。コミュニケーションを図ることは社長自らも積極的に行っており、担当課長も常に社員と対話をするようにしている。その際にはプライバシーに配慮し、立ち話ではなく、別室で話すようにしている。
移動の支障となる物を通路に置かない、机の配置や打合せ場所を工夫する等により職場内での移動の負担を軽減すること
5年前に現社屋ができたが、設計段階からバリアフリーを徹底し、廊下、事務室内とも車いすの社員が回転できるスペースを確保するともに、床の段差をなくし、扉は引き戸にしている。また、上から物が落ちてこないように、事務所内では書庫等の上に物を置かない等をルール化している。
机の高さを調節すること等作業を可能にする工夫を行うこと
机の高さは特に工夫はしていないが、車いす利用者によっては、車いすのまま作業をする場合と、事務用のいすに移乗する場合があるが、その人に合わせて行ってもらっている。
スロープ、手すり等を設置すること
手すりはトイレ等にも設置している。また、室内に入るためICカードをかざす位置も、車いす利用者が届く高さ(通常より低め)にしている。

体温調整しやすい服装の着用を認めること
一般的には、クールビズ、節電等が求められているが、体温調整が難しい社員もいるので、例えば夏場においては推奨されている室温28度以上といった制限は設定していない。総じて各職場の温度設定は28度より低いが、それで寒くないかどうかも、職場の課長が把握し、調整している。そして、個人差もあることから、寒い場合は一枚上着を羽織る等は認めている。
出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること
・公共交通機関を使って通勤する社員が9割だが、マイカー通勤者もいる。時差出勤は特に設けていないが、少し早めにラッシュを避けて通勤する人もいる。通常であればラッシュが気にならない社員もいるが、電車が遅れて込み具合がひどい時などは、連絡が入るので、あわてずに出社するように指示を出している。
・休暇については親会社に準じて、雇用形態に応じて取得できる休暇の種類・日数が異なるが、社員はその範囲で病気休暇等を取得している。また、体調が悪い時には、社屋内にある保健室で休憩を認め、そこまで行く必要はないという場合であれば、会議室でしばらく横になって休む等も認めている。その際は簡易ベッドも用意しているが、応接セットのいすで少し横になる場合もある。
本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること
特例子会社なので、この点は当たり前の事として取り組みが行われている。また、特例子会社がある社屋には関連会社も入っているが、毎日同社の障害のある社員との接点があるため、エレベーターの乗り降りの際の配慮等は得られていると思われる。
その他の配慮
・コピー機については、車いす利用者用に高さの低いものを用意している。
・在宅勤務制度を導入しており、重度の身体障害のある社員6名が、市場調査等のデータ入力などを担当している。在宅勤務者とは毎日、パソコンのモニターを使って、テレビ会議方式で課のミーティングをしている。
・総務部門に勤務する上肢障害のある社員は、様々な書類作成のほか、全社員の人事・福利厚生のデータを作成・把握している。このこともあり、個別に他の障害のある社員から相談を受けることもあり、当事者同士として相談に対応している。
・パソコン関係業務については、SE(システムエンジニア)から、やや高度なレベル、通常のレベルと、本人の力量に合わせて活躍できるよう、多様な仕事を用意している。
・個別の事例としては、左上肢が不自由だが、あまり重いものを持つことはできない者について、上司や同僚が自然な関係の中で手伝っているケースや、聴覚過敏があってコピー用紙をさばく音が気になる社員もいるため、作業中の耳栓使用の許可は不要としているケースなどがある。
このように、全体的にとてもナチュラルな関係性の中で、合理的配慮が提供されている。

障害者への配慮の提供にあたり、障害者と話し合いを行った時期・頻度等の配慮提供の手続きの詳細
採用時は1次面接、2次面接いずれのタイミングでも必要な合理的配慮について聞いている。また、入社後もその都度話し合っている。例えば、「これこれのことがしんどかったら、こうしようか」というように、お互いに建設的な対話を行っている。
配慮を受けている障害者の意見・感想等
前出の「採用後の配慮」の「その他の配慮」にある総務部の上肢障害がある社員の言葉として、次の説明があった。
「年々社員同士で仲良く飲み会等に行くこともあり、その分、お互い仕事もやりやすくなっていると聞いている。自分自身の展望としては、親会社と障害のある社員をつなぐ存在なので、今後、もっと懸け橋になっていきたいと思う。」
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