自然体での障害者雇用により職場定着
- 事業所名
- 株式会社小滝電機製作所
(法人番号: 7410001006213) - 業種
- 製造業
- 所在地
- 秋田県大館市
- 事業内容
- 国内自動車メーカーの部品として幅広く搭載される車載用LEDランプ基板等の電子機器製品の生産
- 従業員数
- 240名
- うち障害者数
- 5名
-
障害 人数 従事業務 知的障害 3名 運搬業務 精神障害 2名 運搬業務、出荷処理等 - その他
- 障害者職業生活相談員
- 本事例の対象となる障害
- 知的障害、精神障害
- 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
株式会社小滝電機製作所(以下「同社」という。)は、昭和55(1980)年に設立された。本社は秋田県大館市であり、他に静岡県静岡市に事務所を置いている。
車載製品(サイドターンランプ・ストップランプなどの各種標識灯、冷凍車ユニット)、無線製品(Bluetooth®・2.4GHz無線モジュール)、映像製品(CCDカメラモジュール)、センサー製品(圧力・画像センサー)の設計・生産、自社製品販売(光質センサー・高性能カラーセンサーユニット)を主な事業としているが、特に車載製品の生産に特化し、独自の品質管理プログラム「P・D・Eシステム」を基本に生産を行っている。
創業者訓である「努力せずして成功はなし、目指すは超一流」と、経営理念「優れた創造力と燃える情熱」のもと、生産に使う専用設備は全て自社で開発し、品質と効率をより向上すべく生産技術の強化を進めている。
(2)障害者雇用の経緯
障害者を雇用することとなったきっかけは、事業の発展と共に従業員が増えてきたことで、障害者の法定雇用率を達成する必要があったと思われるとのこと。
それ以来、障害者雇用を継続しているが、現場の戦力として障害者雇用は特別なことではなく同社では当たり前のこととなっている。障害の有無に関わらず、それぞれの適性に合った仕事を担当することで能力が発揮されている。
2. 障害者の従事業務と職場配置
障害のある従業員は主に運搬業務を専門に担当している。1つの製品の製造工程はいくつかのプロセスから成り立ち、それぞれのプロセスごとに製造ラインがある。各ラインでできあがった段階の製品が入った箱を次のラインに運んだり、複数のライン工程を経て完成した製品を倉庫へ台車を使って運ぶ仕事である。たくさんのラインがあるため、自分でルートや運搬の順序などを考える必要がある。例えばこのラインの製品は5分でできるから次は5分後に来ようとか、あのラインの箱はいっぱいになったから次の箱を置こうとか、効率よく仕事ができるように経験を活かして行っている。運搬業務はひとりで関連する複数のラインを受け持ち、統括する班長より指導やアドバイスを受ける。
運搬業務の他には2名が出荷処理等に従事している。
現在、障害のある従業員は5名で、安定した作業、勤務ぶりである。各人の個性や特性に合った作業を、自分のペースで進めて完結できる業務内容として切り分けていることが継続雇用につながっていると同社では分析している。
3. 取組の内容と効果
(1)取組の内容
ア 募集・採用
同社では欠員の補充や事業等の拡大に伴う募集が中心であるため、新卒者より即戦力を求めることが多く、募集する場合は、ハローワークを通じてその都度行っている。障害者の募集についても同様である。なお、障害者については、ハローワーク大館が主催する障害者向けの就職面談会「きらめきワークフェア」に参加することもある。
同社への就職希望者や興味を持った人がハローワークから紹介された場合には、まず職場見学(以下「見学」という。)をしていただくこととしている。見学では、1~2時間かけて工場の中の雰囲気を感じてもらいながら事業内容等の説明を行う。その後、ハローワークで見学の感想を含め今後について話し合いをし、就職に前向きであれば1~2週間の職場実習(以下「実習」という。)を体験してもらう。
実習を体験した上で就職を希望した場合に、正式に面接を行い、採用が決まれば、入社という流れになる。採用を急ぐ場合には、実習中の状況から人柄や実績等も把握できているので、面接をせずに採用することもある。
他方、運搬業務以外での障害者雇用も対応している。直近では、簡単な図面を作成する人員が足りないためハローワークに一般求人を出したところ、障害者1名の紹介があった。今後、実習をしながら、条件が合えば採用の方向で準備を進めていく予定である。
また、運搬業務は経験者採用をメインとしているが、地域の特別支援学校とは採用等に関する情報交換も行っている。
採用後はそのまま実習を行った場所に配属となることから、入社にあたり採用予定者の入社日等は事前に配属先の従業員にも伝えるが、採用に向けて準備することは障害の有無に関わらず同様である。
イ 業務指導等
すでに述べたように、障害のある社員は主に運搬業務を専門に行う。入社後は実習を行った部署に配属されるが、配属先には、指導を専門とする担当者は配置してはいない。その業務に慣れた先輩が、1週間から内容によっては1か月ほどマンツーマンで実際にやって見せながら口頭で指導して引継ぎ、ある程度できるようになったら独り立ちをすることが多い。指導する先輩が障害のある従業員のこともある。
ウ 業務の検討等
入社時は製品の運搬業務を担当していたが、働いていくうちに適性や能力が分かり、担当業務の変更を行うこともある。
障害のある従業員のAさんも入社時は運搬業務を行っていたが、後にパソコン等の操作ができることが分かり、出荷処理とダブルチェック作業を行ってもらうこととした。それらの習得後には、データ入力作業を追加した。
Aさんの現在の担当業務は、出荷処理、ダブルチェック作業、データ入力である。
出荷処理は、ハンディターミナルというデジタル端末機を使って出荷する製品に付けられたバーコードを読み取り、パソコンに送られてくるデータと照合しながら確認し、結果をパソコンでデータ処理する業務である。
ダブルチェック作業は、できあがった製品が入った通い箱という専用の箱から検査対象の製品を取り出し、拡大鏡を使って目視で検査する業務であり、データ入力は、検査結果をパソコンのデータに正確に記録(入力)する作業である。
いずれも専門的な業務であり、デジタル技術と集中力が求められるが、Aさんの適性にマッチし、本人もやりがいを持って勤めている。
このような担当業務の再検討・変更・調整は、勤務状況全般を見ながら現場の責任者同士で話し合い、総合企画部長に相談・報告されることが多いが、現場の判断が尊重されている。

出荷処理の状況
同社の業務内容が立ち仕事であり、さらに運搬業務となると歩き回ることが多いので、足の不調を訴える従業員も多い。過去には生産ラインに入り、組み立ての業務に携わった障害のある従業員がいたが、立ち仕事により足痛を起こし退職したことがあった。そのため、靴選びには同社も入念に確認している。生産装置等静電気防止のため、帯電しないよう静電気を流しやすくする専用の靴を履くことにしているが、さらに靴底のクッション性の高いものであったり、つま先の出ないものなど、業務に応じた靴を選んでいる。
作業効率と確実性が求められるため、同社では機械化、自動化が進んでいる。機械の稼働状況は従業員が確認し、効率化のための改善点などに気が付いた場合は、機械の改善を行う。機械の周囲には安全バーなどを備え、従業員の安全確保に努めている。安全管理委員会を毎月開催し工場内を巡回しながら安全性の点検や確認を行っている。
また、作業台の高さが身体に合わないと腰痛になることもあるため、高さは作業者に合わせて調整できるようにしている。
さらによりいっそう安全性と働きやすさを向上するため、工場内は、床にテープを貼りライン区画を決めるなど、日常的な工夫をしている。テープを貼ることで、進入できない場所を明示すること、歩く方向を徹底すること、整理整頓し物品の保管場所を決め、そこからはみ出すことのないよう徹底することなど、事故を起こさない配慮が至る所に見られる。
そのことが、障害のある従業員も移動や運搬がしやすく、作業が分かりやすく、働きやすい環境にもつながっている。
各生産ラインには10数名の各ライン長がいて、統括・管理を行い環境整備に努めている。
以下の画像は、安全面での職場改善の例である。いずれも進行方向や機器などの設置場所等をテープで示している。

事業所内の画像1

事業所内の画像2 事業所内の画像3

事業所内の画像4 事業所内の画像5

事業所内の画像6
オ 体調の報告・相談等
仕事中に体調不良になったときなどは、必ずライン長に伝えるように徹底している。ライン長に直接伝えにくい場合は、障害者職業生活相談員資格認定講習を修了した総務係(以下「担当者」という。)に連絡するように指導している。
相談事を聞く役職は特に決めていないが、ライン内の設備など現場の実務に関することはライン長、他のことは担当者が休憩時間などに受けることが多い。担当者が障害のある従業員に積極的に声を掛けて、信頼を得て話しやすい環境にしていることも雇用の継続につながっている。
例えば、何でも自分で解決したい特性のある従業員には、入社当初にひとりで考えてパニックになってしまうことが多く見られたので、担当者から声をかけて相談した。周囲が助けてくれるから安心するようにと助言したことで、状況が改善したことがあった。
同社で雇用している障害のある従業員は、自分から積極的に担当者や同僚に話しかける方が多い。仕事を通じてコミュニケーションが生まれ、自然に交流が行われている。
また、同社では240名ほどの従業員がいるが、日頃の業務で顔を合わせるのは同じラインの同僚が多く、他の部署とはあまり交流する機会がない。そのため全社的な交流の機会を作ろうという社長の考えもあり、基本的に全員参加で夏と冬の休暇前に納涼祭と忘年会を行っている。各部署持ち回りで開催の準備を進め、飲食や余興や抽選会などを通じて交流しており、障害のある従業員も参加し、交流している、前回の納涼祭でも交流を深め楽しんでいたとのことである。
カ 通勤手段
前述のとおり、同社では、現在、知的障害のある従業員が3名、精神障害の従業員が2名の計5名を雇用している。通勤の手段は自家用車、バスのほか、1名が片道15分ほどかけての徒歩で通勤している。徒歩通勤者は当初、自転車通勤を考えていたが、安全面を考慮し、本人と同社が相談の上、徒歩通勤とした。障害の特性や通勤距離、道路事情に合わせた方法で通勤している。
キ 休憩
休憩時間は昼食時と、他に午前と午後にそれぞれ1回ずつある。同社には広い食堂があり、休憩時間の使用は自由である。従業員それぞれの業務内容によって休憩をとる時間が異なっている。取材時に拝見したが、作業場同様、食堂もまた整理整頓が行き届き、使用物品(例えばいすなど)の定位置が示されるなど利用ルールが明確で、誰が見ても分かりやすい。
障害特性によっては片づけが苦手であっても、ルールが明確なので利用しやすいと感じる。
また、障害特性によっては他者と一緒に休憩時間を過ごすことが苦手であっても、休憩時間が異なっていたり、過ごしやすい場所で、ひとりで休息を取ることが自由なことも雇用の継続につながっているようだ。

整理整頓されている食堂
(2)外部支援機関の活用
同社では外部の支援機関との連携も進めている。
障害のある従業員の中には、支援センターを利用している人がおり、そうした場合には支援センターと連携している。本人の了解を得ながら、同社での勤務状況等について情報共有し、必要な場合には支援センターから本人への支援を実施してもらっている。
過去には入社後に障害のある従業員間でコミュニケーションが上手くいかなかったことがあったが、その際は、直属の上司であるライン長や支援センターが仲介に入り双方の話を聞いたことで解決することができた。
また、秋田障害者職業センター(以下「職業センター」という。)のジョブコーチ支援も利用している。支援センターからはジョブコーチ支援制度の紹介があり、知ってはいたが、最近まで利用したことはなかった。しかし、最近雇用した障害のある従業員のBさんは、「最初は不安なので」という本人の希望により、職業センターのジョブコーチ支援を受けた。
Bさんは何でも確実にやりたいという障害特性があったので、同社としては、個別のマニュアルを初めて作成した。Bさんは、最初は覚えるのも大変だと不安を感じていたようだが、ジョブコーチに相談し、助言を受けながら、仕事に慣れていった。ひとつひとつ業務手順を確認し、メモを取って整理しながら習得することで安心できたようだ。
あるときBさんの指導を担当している先輩従業員が1週間ほどの休暇を取ることになったことがあった。その際、Bさんは業務を時間内に終わらせることができるかなど不安だったようだが、担当者がゆっくりでも残業しても大丈夫ということを伝えたところ、安心したのか、先輩従業員の分も含め担当業務をこなすことができた。前向きな考え方で結果を出せた経験が、本人の自信にもつながったようだ。
(3)障害者雇用の波及効果やメリット
障害のある従業員からの環境整備への提言(改善案)が、職場全体に良い影響を与えたたこともある。一例として、屋外のゴミ捨て場までの照明の設置や排雪を求められ、全社的に対応したことがある。事業所のある大館は積雪量の多い地域なので、障害の有無に関わらず働く従業員等全員のために冬場の転倒災害の予防等は安全面でもとても重要である。そのためにも気づいた人が気兼ねなく報告できる社内の雰囲気作りにも努めている。
人手不足の社会情勢の中、欠勤なくまじめに仕事に向かう姿勢が一緒に働く他の従業員にも刺激になっている。
4. 今後の展望と課題
同社には自動車のヘッドライトの部品の製造業務があり、この受注が増えてきている。そのため運搬業務の仕事も増え、人材の確保がますます重要になってきており、同社における障害者雇用が担う役割はこれまで以上に大きくなっている。障害の有無に関わらず、従業員一人ひとりの特性等を活かした業務分担や働きやすい環境整備は、従業員全員に良い影響を及ぼしていると同社では考えている。同社ではこれからも従業員全員が安心安全に長く勤められるよう努力していくこととしている。
執筆者:フリーライター 藤原 里香
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。











