障害者の自立の為、定着支援をベースにした雇用管理と個別目標・支援プログラムにより人財育成を行う企業
- 事業所名
- 日野ハーモニー株式会社
- 所在地
- 東京都日野市
- 事業内容
- 日野自動車株式会社及び関連会社等から委託された、清掃、メール、事務作業等
- 従業員数
- 31名(平成24年1月31日現在)
- うち障害者数
- 18名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 17 清掃業務、オフィスサービス業務、名刺印刷業務、メール仕分け・集配業務、菓子販売業務、ゴミ仕分け業務等 高次脳障害 1 精神障害 - 目次


1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯と推移
(1)事業所の概要
① | 会社設立: | 平成19年12月3日(平成20年5月6日、日野自動車株式会社の特例子会社として認定、営業開始は平成20年4月1日) |
② | 企業理念 「基本理念」
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③ | 事業の概要 日野自動車株式会社、関連会社等から委託された下記の各種業務
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(2)障害者雇用の経緯と推移
① | 平成18年頃までの日野自動車における障害者雇用の考え方は、以下のとおり身体障害者(聴覚障害者)中心で、雇用については伸び悩んでいた。
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② | 当時、障害者社員の高齢化による退職者の増加、新規社員の増加、加えて障害者雇用についての社会的責任が求められる状況の中で、障害者雇用の拡大と新たな職域の開拓等、抜本的な見直しが必要であると判断し、特例子会社の設立を決定した。 |
③ | 平成19年5月に特例子会社設立プロジェクトを立ち上げ、以下の受け入れ態勢の整備を行った。 | ||
・職域の拡大: | 障害者の受け入れ実績のない職場への受け入れ(実務経験のある障害者を受け入れる)、更なる職域拡大として知的障害者の就労の場の創出を行った。 | ||
・環境整備: | インフラ整備・・・ | 福祉対応型トイレを各建屋に設置、車いすバリアフリー化 | |
人事制度 ・・・・・ | 障害者のための特別休暇(健康管理・能力開発、12日/年) 自家用車通勤の優遇(通勤距離条件の撤廃、職場付近に優先駐車場を確保) |
④ | 平成19年12月3日に日野ハーモニー株式会社設立、平成20年4月1日営業開始に向け、6名の障害者を雇用し、職務開拓については親会社から独身寮の清掃、メール仕分け・集配・封入・発送作業等を受託した。 障害者雇用率の推移
備考:障害者数は人数、日野ハーモニーは人数とカウント数
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2. 取り組みの内容
(1)障害者雇用
① | 雇用について 知的障害者については、特別支援学校、東京障害者職業能力開発校の新規学卒者を中心に雇用している。入社希望者全員に職場実習またはトライアル雇用(3ヶ月)を活用し、本人と職場の適合性を判断し、その後嘱託社員として1年間勤務後、正社員として雇用、嘱託雇用期間中に課題のある社員は、更に1年間嘱託社員として勤務後、正社員雇用の可否を決定している。 |
② | 採用方針について 以下の事項を重視している。
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③ | 労働条件について
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④ | 指導員体制について
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⑤ | 指導法について
![]() ビジュアルマニュアル
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(2)労務管理
① | 社員としての目標(社員行動指針)
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② | 採用・定着支援の基本目標
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(3)個別目標・支援プログラム(詳細については参考資料2参照)
当社は、平成22年度から労務管理・定着支援強化を目的として「個人目標・支援プログラム」を導入した。
「個別目標・支援プログラム」の内容は、「スタッフの現状把握(日常生活技能、社会生活技能、社会生活における行動特徴)、前期目標のふりかえり、これからのプランとその実現のために実施すること」の3項目で構成されており、その内容は以下のとおりである。
① | スタッフの現状把握(以下の評価の詳細については参考資料1参照) 現状把握の評価項目と評価場面(括弧で表示)は以下のとおりで、いずれの項目も4段階評価(4:できる、3:大体できる、2:あまりできない、1:できない)で行っている。
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② | 前期目標のふりかえり指導員は、スタッフの現状把握に基づき、前期6ヶ月の個々の目標に対し達成度の見える化を行い、スタッフの今後6ヶ月の目標設定の参考にするよう指導を行う。 |
③ | これからのプランとその実現のために実施することについて指導員は、長期的視点でスタッフに期待する姿、改善が必要とされることや改善が望ましいことを指示・指導し、必要な対策を行う。 |
* 当社では、上記の「個別目標・支援プログラム」の実施で、プログラムの作成には苦労したが、「見える化」ができたことで、より指導のポイントが明確になり、会社から支援機関への発信ツールとして、スタッフの就労支援ポイントを明確にすることができ、支援体制の強化に繋がった。その結果、スタッフに対する生活面における将来の目標、意識づけの重要性を支援関係者と共有し、特に支援機関に対しては自立に向けた基盤作りを通して、継続した安定就労について家族との連携強化を図るように協力要請している。
*参考資料

(4)職域開拓・職務設計
当社が行っている業務を親会社の社内報やイントラネットに掲載し、知的障害者の理解・啓発を行っている。また、業務は親会社から依頼される作業が中心であるため、親会社人事部等と定期連絡会を開催(月2回)し、業務の更なる開拓に向けた情報交換を行っている。
(5)余暇活動
当社は、毎年社員親睦バス旅行を行っているが、当社独自の考えが込められている。その一つが物作りを行っている企業として、障害者自らが参画する活動・行為を旅行計画の中に組み込んでいて、陶芸の絵付け、農園体験等を行っている。もう一つは、支援機関関係者の参加であり、スタッフ(社員)、家族、支援機関、会社の連携強化と一体感を醸成する効果をもたらしている。
(6)障害者雇用のメリット
当社社員が構内で元気に挨拶をする、交通ルールを守る、一生懸命に働いている姿等、親会社の役員や社員にも浸透し、全社的に障害を持つ人達に対する理解・啓発が広がってきている。更に、スタッフ(社員)は、彼らの仕事を通じ現状を認識し「もっと早く、掃除がきるようになってみんなのお手本になりたい」と宣言する等、モチベーションの向上にも繋がっている。
(7)地域との共生
地域への社会貢献事業として、日野市の「わーくわーく事業」を活用し、地域の重度障害者授産施設“夢風船”にオリジナル菓子(クッキー等)の製造を委託している。当社の近隣に住む当該施設で働いている障害者と家族が、当社の社員と挨拶を交わすようになり、地域との新たな繋がりが生まれている。
(8)助成金の活用
- ハローワーク関係:試行雇用奨励金、特定求職者雇用開発助成金
- 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構関係:業務遂行援助者の配置助成金、第1種作業施設設置等助成金等
3. 今後の展望と課題
(1)障害者自身の課題
当社は、会社設立後4年間試行錯誤しながら課題に対応してきたが、設立時には想定していなかった、モチベーションの維持・向上、加齢により限定されてくる職域・働き方、メンタルケア、スタッフの自立(生活・就労)、性、結婚・出産、スタッフのローテーションやリーダーのローテーション時の人間関係、多様な働き方の導入対応、離職支援等の課題が増えている。以上の状況に関しては、前述の個人目標・支援プログラムの活用、各関係支援機関との連携等により、継続的な安定就労を目指し取り組んでいく考えである。
(2)親会社の今後の動向への対応
親会社は、茨城県での新工場展開を計画しており、新天地での障害者雇用について、現在のノウハウを新工場でも活かしていく考えである。一方、平成25年度から八王子の研修センター、日野自動車博物館、併設するレストランの清掃業務を受託し、業務拡大と障害者雇用の増大を図っていく予定である。
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